Image3.jpg現在の七郎右衛門淵

七郎右衛門淵(しちりょむぶつ)

shichiriyomubutu1.jpg笹川の上流に深い淵があり、それを七郎右衛門淵(しちりょむぶつ)と云う。
むかすのーオ、七郎右衛門とゆう村のすとが、まいにつまいにつ朝の暗がるから、あかす切るをしておらすたと。
 或る日、川ぶつに休んでおらすたら、でっかい「イガラ」がおよいでおったのを見つけてのぼせて釣りあげ、すぐひるまのさいのみそをつけて、あぶって食べやすたと。
 ちょっこすすたらのどがはっしゃいで来たがで、その川ぶつの水をのましたが、どるだけ飲んでも、はっしゃぎがとれんがで、とうとう淵の中に入っていかすたと。
 村の人たちゃ七郎右ム様はぶつの大蛇に見込まれて「イガラ」をえずくにつれこまれ、大舵にならすたと云うがじやと。
 それから、そのぶつを七郎右衛門ぶつと云うようになったがじゃと。
 檀家寺のホンコ様には雨雲に乗ってお詣りさすもんやから、必ず雨がふるがやと。云われておるがじや。
 又 そのぶつに石なげるとにわかあめがふるがやと。

(出展:ふるさとの民話と伝説 【かいくれん】より)

 昔、七郎右衛門と言う村の人が、毎日々々朝の暗いうちから、薪(たきぎ)を切りに出かけていました。
 ある日、川淵で休んでいると、大きな「イワナ」が泳いでいるのを見つけ急いで釣りあげ、すぐ昼ご飯のおかずの味噌をつけて、火で焼いて食べました。
 少ししたら喉が渇いてきたので、その川淵の水を呑みましたが、どれだけ飲んでも、乾きはとれず、とうとう淵の中に入って行ってしまいました。
 村の人たちは、七郎右衛門様は淵の大蛇に見込まれて「イワナ」を餌に淵に連れ込まれ、大蛇になってしまったと言っています。
 それから、その淵を七郎右衛門ぶつと云うようになりました。
 檀家寺の報恩講には雨雲に乗ってお詣りにお出でになるので、必ず雨が降ると言われています。
 又 その淵に石なげるとにわか雨がふると言い伝えられています。

おせんおとし

Iおせん挿絵.jpg「昔の-お」久助におせんという器量のいい娘めやおったと。いい空に隣のばあさまと入山の奥へ山もんとりにいかすたがやと、そしたら山道に赤い碗のかけらが落っとったら、ばあさまが奥山のもんちゃひろわんもんやと意見さすたけど、おせんは云うことを聞かんとひろてほどこにいれてすもたと。
日ゃくれてうつへ帰るがになったら、深いたんに来たら、来たときやなかったとこに丸太のはすがかかっとったがでばあさまはおかすいと思っておらすまに、おせんは早はすの
まん中まで渡ていったと、そすたら、そのはしゃ、みとるまにおせんをのせたままたん底へ落ちていったと、ばあさまはびっくりして見たらそのはしゃ大蛇やったと。
ばあさまはしゃっきりして村の者を呼ばって来てさがして見たれど深い谷底はいつもと変らんように水(みじゃ)流れておったと、そるからのー村の衆やそこのといをおせん落しというようになって、「山のもんちゃめったにひろわんもんじゃ」と、いましめ合うたと。

十二組の坂

十二の坂挿絵.jpg

むかすノーオ、笹郷の山奥に、東大又というとこがあるがじゃ。
そこにノーオ、十三人の木きりや寝どまるすとらすたこーやがあったがやぁ。
あつーい夏の夜さるのことじやと、木こるのおらす、こーやへ、きりよよしの娘めゃ道に迷おて一晩泊めてもらわれんまいかとたのむにいらすたとやァ。
そすたら十三人のうち十二人までが若いもんじゃから、めよい娘じゃったがで泊めることに文句がなかったがじゃれど小屋のはいりくつにねとらすた年寄りの木こりだけは、こーい時間に、こーい山奥の小屋へ若い娘が迷て来るつことは、ちょっこすおかすいがじゃないがかとおもて泊めるがに反対さすたと。
そんじゃれど、若いもんがでかいとで年寄が負けて泊めることにさすたと。
若い衆たまぁに、きりよのいい娘を見たもんでめずらすがって、はっしゃぎはっしゃぎして、くたぶれて寝てすもたと。
そんじゃれど、年寄りだきゃ何んじゃら気色わるて、なかなかねーられんだと。
でぇー、ちょっこすすたら、つかれでてまどろんだれど、何んやら物けするがで目えさまして、あたるを、そーおっと見まわして見たら寝とったはずの娘めゃ、毛おっさわいて、寝とる若い衆の枕もとから枕もと、移ってあらいたと。年寄りゃ不思議におもて、そおっーと、なんすとらすか見とらすたら娘めゃ、男の口ん中から、舌をむするとって、さも、うんまそうに喰べながら、つぐの人のとこへl移っていったと。
そすて、おすまいに自分のそばに寄ってらすたがで「あつっ」と云うて、もうもうになって、娘におそいかかってとらまいろとさわいでおっても、若い衆一人も起きてこなんだと、逃げ場ないんがんなった娘めゃ、いくなるでつかい山鳥になって飛んでってしもうたと。
そんで、小娘とばっかすだらにしておったがに、若い衆はみ-んな殺されて、用がい深い年寄りだけが助かったと。
その娘はの-お、ひねた山鳥の化けもんやったと。
そるから、小屋のあった坂道を十二組の坂と言われておるがじゃ。
そるから-の、山の神さま十三の数をきろうとらすが言うて、山へはいるときゃ十三人ではいらん様にさすたと。